ヘリコバクターピロリ感染胃がんの方が術後の予後良好

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ヘリコバクターピロリ感染は胃がんの発生リスクとなりますが、手術後の予後に対してどのような影響を及ぼすかは明らかではありません。

独協医科大学では、胃がん手術後症例におけるピロリ感染の有無および菌量が予後に及ぼす影響を比較検討しました。

ピロリ菌感染を伴う症例の方が術後の5年生存率は有意に高く、菌量が多いほど高かったと報告しました。

リンパ節転移のある陽性群で5年生存率が高いということがわかりました。

胃がんの発生には、胃粘膜の慢性炎症の結果として生じる萎縮性胃炎が関連することが示されており、これにはピロリ感染が重要な役割を果たしています。

そのため、ピロリ菌は胃がんの発がん因子とされています。

一方、胃がん手術後はピロリ感染を伴う症例の方が予後が良好との複数の報告があります。

そこで獨協医科大学は胃がん手術後の200例を対象としてピロリ陰性群(98例)と陽性群(102例)について比較検討しました。

胃がん背景粘膜でのピロリ感染を培養法で測定し、感染の有無だけでなく菌量の多寡に関しても検討しました。

その結果、5年生存率はピロリ陰性群(29%)に比べて陽性群(50%)で有意に高かったです。

菌量による比較では、菌量が多くなるほど5年生存率も高いという結果でした。

早期がん、進行がんの比較においても、陽性群の方が5年生存率が高く、進行がんでは有意差がみられました。(陰性群21.1% 陽性群36.7%)

リンパ節転移に関しても、転移の有無にかかわらず5年生存率は陽性群で高く、特に転移あり例では陰性群16.8%、陽性群36.8%と有意差が認められました。

陽性群で予後が有意に良好だった因子は⓵進行胃がん、⓶リンパ節転移陽性、⓷腹膜播種陰性、⓸肝転移陰性だと説明がありました。

獨協医科大学はさらに、胃がんと胃がん背景組織におけるCOX-2 mRNAの発現量についても検討を行いました。

COX-2は胃がんや大腸がんの発現、炎症に関連する因子です。

その結果、がん組織と正常組織(非がん部)におけるCOX-2 mRNAの発現量については、正常組織の4.91に比べてがん組織では5.14と多かったです。

正常組織ではピロリ菌感染の有無によりCOX-2 mRNAの発現量に差は見られず、ピロリ感染がCOX-2の発現を誘導していないことがわかりました。

また、アスピリンによりCOX-2の発現を抑制した場合、ピロリ菌除菌後の発がんが見られなかったとの報告などもあり、COX-2に関連した発がん過程にピロリ菌感染の影響は小さいことが示唆されています。

研究者は「さまざまな予後関連因子があるが、今回の検討ではピロリ感染例は進行がんやリンパ節転移例で予後が良好でした。特にリンパ節は細胞免疫が働く場であることから、ピロリ菌の感染は細胞免疫に影響を及ぼしている可能性が考えられます。」と結論づけていました。

とはいえ、ピロリ菌感染は胃がんの発生リスクとなりますので、今までピロリ菌の検査を受けたことがない人は自分の胃の中にピロリ菌がいないかを必ず確認しましょう。

今はインターネットでピロリ菌検査キットが販売されています。

陽性であった場合、必ず病院を受診して除菌してください。

ピロリ菌除菌をすれば胃がんは防げます!

胃がんの予防を日本全体ですすめていくために、皆様ピロリ菌検査をしてください。

よろしくお願いいたします!

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