立ち退きを強いられた一人暮らしのおばあちゃん

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私が訪問診療で担当している患者さん。

古いアパートに一人暮らし。

ある日、オーナーが

「アパートの取り壊しが決まったから、来月までに引っ越して下さい。」

だって。猶予期間一ヶ月弱。あまりに急すぎるだろ!

認知症のおばあちゃんですよ。

そんな無慈悲な行為は人間としてあり得ない!

本人は認知症がすすんできているし、家族、親戚は遠くにいるのですぐに対応出来ないとのこと。

主治医の私は担当ケアマネと一緒に次の生活場所を急いで探しました。

話し合いの結果、もともとデイサービスで通って慣れていた施設にショートステイすることにしました。

そこの施設は老健も併設しているため、そこでの生活に本人が満足してくれれば入所も可能です。

ショートステイを始めてしばらくは、

「友達も出来ないし、自分のベッドに戻ってもテレビもラジオもないから音がなくて寂しい。自分のお家に帰りたい。」

と、おばあちゃん。

主治医の私は、おばあちゃんのベッド横にラジオとテレビを設置してあげました。

テレビを設置した日、おばあちゃんは、

「音のある生活が嬉しい。なんかお家に帰ってきたみたい。」

と話していました。

それから、おばあちゃんは絵を描くのが好きなので、広間で絵を描くことをすすめました。

この施設はいつも美味しそうなお食事が出てくるので、そのことを強調して話しました。

「毎日美味しいごはんが何もしなくても出てくるし、描きたい絵をいつでも描けるし、お風呂も入れてくれるし、自分の部屋に戻ってテレビやラジオを聴いてもいいし、最高の生活ですね。」

訪問診療の度に話しました。

今日もその患者さんの訪問診療日でした。

広間に行くと、友達も出来て楽しそうに話していたし、レクの時間には風船で楽しそうに遊んでいました^_^

3月中旬には併設の老健に入所出来そうです。

あー本当にこの人はここの施設に入所出来て良かったな。

急な引っ越しにはなってしまったけど、一人暮らしの時は、玄関外のゴミ捨て場に行く時に転倒して救急病院に運ばれたり、風呂掃除をした際に腰椎圧迫骨折を起こしたりして大変でした。

老健に入所したら担当医師が変わるので、そこで私の訪問診療は終わりです。

患者さんにとって最適な生活環境を整えることも主治医の役割で、今回はそれを実践出来たケースでした^_^

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